『真空チャックによる機械加工』

 真空チャックは古くから使われてきたチャックであるが、一部の分野でしか使用されず、機械加工屋にとっては、あまり馴染みのないチャック方式であるかもしれない。 マシニングセンタ・NC旋盤での部品加工では、加工実績・加工データー等が無く取り組みにくい技術である。
 真空チャックのワーククランプ力は、メカクランプと比較して非常に弱いのが特徴であり短所でもあるが、使い方よっては大変便利なチャッキング方式といえる。 ただし、現状では、真空チャックを使用したマシニングセンタや旋盤による加工実績、加工データーなどはなく、真空チャックは取り組みにくい技術の一つかもしれない。
 ここでは、機械加工で使用する真空チャックについて、その構造、しくみ、上手な使い方、そしてMCや旋盤での使用事例と効果をまとめてきた。参考になれば幸いである。
【真空チャックの原理と使用条件】
(1)原理
 空チャックの原理は、下の図に示すようにワークとチャックの接触面を真空にすることにより、ワークが大気圧に押され、チャック面にワークが吸着することを利用したものである。
 このワークを押す大気の圧力は1c㎡当り1㎏でしか無い、実際には真空ポンプの性能気圧差が有るので0.8~0.9㎏c㎡と考える。
 仮にOリングの内寸法がφ500mm取れたとすれば1570㎏~1767㎏に成るからけして小さな数字ではない。 また、このときの横方向の力は、摩擦係数0.35位を掛けて549~618㎏となる。

使用可能なワーク・工作機械
 真空チャックを使用できるワーク素材としては、鉄、アルミ、銅、ステンレス、プラスチック、ガラス、その他通気性の少ない素材が挙げられる。
 また、真空チャックを使用できる工作機械には、その原理・構造から旋盤・フライス盤・マシニングセンタ・ボール盤・平面研削盤・プレーナー(平削り盤)などが挙げられる。
使用実例
事例-1

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事例-2

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事例-3 縦型

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事例-4 縦型

事例-5

事例-6

事例-7

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事例-8

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【真空チャック使用による効果】
(1)真空チャックの効果
 機械加工における真空チャックの使用で得られる効果をまとめると、次のようになる。
①Z方向の加工精度が非常に安定している。
②ワークが真空チャックに密着するため、びびりの発生がまったくなかった。
③真空吸着のためクランプによる歪がほとんど発生せず、仕上がり精度が安定している。
④ワークの切削熱が真空チャックより放熱されるため、熱変形が少なく、加工精度が安定している。
⑤通常のジグ・取付け具のようにクランプ金具用金具がないため、カッタとの干渉がないため、五面方向からの加工が可能である。
⑥取り付け,取り外しが、スイッチON・OFFのワンタッチでできるため作業性が向上した。
⑦マシニングセンタの稼働率・稼働時間が向上した。
⑧クランプ金具を使わない為、多数個取りが楽に出来るようになった。
⑨ワークの取り付け、取り外しに技能が必要なくなった。
工数低減41.8%の事例もある(事例-8)。
(2)真空チャックを使用しての課題
逆に、真空チャックを使用しての課題点を挙げると次のようになる。
①マシニングセンタでの加工ワークでは、汎用的な治具ベースが使用しづらい為、専用治具になる事が多い、当社では汎用的な治具は補助的な使い方をしている。
②薄い素材の場合は、ゆがみを直しクランプする事が有る為、素材の捨て削りをし基準面を作ることも有る。
③ワークと真空チャックの接する面積が、一般のクランプ方式に比べ広い為、切り屑を挟み易い。
【ワークとコストの適正】
・鉄・非鉄の難加工品(付加価値が高く治具を作っても採算の合う物)。
・量産部品(作業性・多数個取りで生産性が向上する物)。
【真空ポンプの能力と適正】
 吸着能力は吸着面積と到達真空圧によって決定されるのでポンプの排気量の違いによる吸着能力の差は無い。それ故むやみに排気量の大きなポンプ使う必要は無い。今までの実績から判断すると吸着時60L/minその後の保持に20L/min有れば十分だった。
 真空ポンプの種類・性能の違いも有り選定に迷うが、ポンプの適正は機械加工を前提に考えると切削油・切り屑の吸引が考えられる為、エアーエジェクタ方式が適している。
・電気を使わない為、漏電の危険が無い。
・吸引した切削油はドレンパイプで機械に戻せる。
・構造が簡単でメンテナンスがほとんど要らない。
【真空ポンプユニット】
 市販のユニットを選定してみましたが、思った様なポンプユニットが見つからなかった為に自社開発をする事にした。